《旅する教会》南インド編①:昔マドラス、今チェンナイ

社会・国際

旅する教会—アジアの教会を訪ねて:南インド編①

鈴木光(すずき・ひかり):1980年、横須賀生まれ東京育ち。アメリカの神学校を卒業後、2006年に日本キリスト教団勝田教会に伝道師として赴任。2010年より主任牧師。妻と娘1人。著書に『「バカな平和主義者」と独りよがりな正義の味方』(2016年、いのちのことば社)、『伝道のステップ1、2、3』(2018年、日本基督教団出版局)。趣味は読書(マンガ)とゲーム、映画、ネット。

 これはアジアの教会のリーダーたちが、互いの国の教会やリーダーを訪ね歩いて学んでいく共同体型の研修〝PALD(Pan Asia Leadership Development)〟の様子を記した旅エッセイである。僕と旅の仲間たちの道中を、どうぞお楽しみください。(毎週火・金曜日更新! この旅のはじまりについてはこちら

昔マドラス、今チェンナイ

新興経済大国、インド

 2019年の年明け間もなく、僕はチェンナイ国際空港に降り立った。
 僕たち日本組(播先生&僕)はインドからの距離が一番遠いので、日曜の礼拝を終えて深夜便で来ても、他の参加者より少し遅れての到着になってしまった。入国手続きで怪しまれるなど多少は細かいことがあったが、とにかく無事に到着である。

 今回の旅はインドの南東部に位置する、タミル・ナードゥ州の都市チェンナイが主な舞台となる。このPALD研修のインドからの参加者ジェイとラジブは、どちらもこの地域の教会で働きをしている。空港に迎えに来てくれていたのは、ラジブの方だった。
 教会のスタッフの人が車を出してくれ、迎えに来てくれたのだが、駐車場に案内されてみると、すごく装備の良いプリウスが待っていた。正直、僕が日本で乗っている車よりずっといいやつで、「さすが新興経済大国だ」と変なところで実感した。

 準備してくれた市内のホテルに到着すると、これもまたすごくゴージャスで立派なホテルだった。ここを拠点に4日間いろいろ巡ると聞いて、なんか贅沢過ぎて申し訳ない気持ちになるほどだった(というのは建前で実際は「スゲーいいとこじゃん、ありがてー!」みたいな感じでテンションあがった)。
 ちょうど昼時だったので、ホテルのレストランで他の参加者と落ち合い食事をする。既に食べ終わっていたみんなのもとに、何やらケーキが運ばれてきたので、何だろうと思ったらバングラデシュからの参加者、クシが誕生日なんだそうな。おじさんたちがみんなでニコニコとお祝いしている姿を見守りつつ、僕はこれまたゴージャスなレストランの食事(ビュッフェ)をもりもり食べた。

クシ、誕生日おめでとう

インドの既視感

 するとジェイが何やら手に持ってこちらに来るので何かと思ったら、ヤクルトだった。そう、あのお馴染みの飲むヤクルトだ。それを3本くらい持って来たから、分けてくれるのかと思ったら、隣に座って一人で全部飲んだ。
 聞いてみると、ヤクルトは今やインドではかなり人気だそうで、ジェイも大好きだそうな。そんなに一気に飲んだらお腹壊さないかと思ったが、文化が違うからいいのだろう。
 一昔前に、ヤクルトがインドに進出し、女性の社会進出を助けるためにも、街中を走る販売員のいわゆるヤクルトレディのシステム込みで売り込んでいると、日本の報道番組で見た記憶がある。
 今回、実際にその実がなっているのを見てひそかな感動を覚えた。こちらでヤクルトレディがうまくいっているのかどうかは知らないが、少なくとも商品そのものはしっかり受け入れられているようだ。日本から遠いこの場所で、馴染みの味に出会い、これもまたテンションがあがった。

 ヤクルトも海を越えて日本からやってきたが、実はここチェンナイは昔から世界の商品が集まって来た土地だった。
 1996年にチェンナイと改名(元の名前に戻ったわけだが)されるまで、町の名前はマドラスと呼ばれていた。歴史の教科書にも出てくるが、帝国主義時代のイギリスの東インド会社が要塞を築いた町で、ヨーロッパから見てインド貿易の玄関口として長く重要な港町であったのがこの街なのだ。

 そんな背景もあり、世界史大好きだった僕としては、ここに来るのはそもそも楽しみだったのだけど、教会を巡る旅としてはさらに重要な特徴がこの街にはあった。それは、ここチェンナイがイエス様の12使徒の一人である使徒トマスが福音を伝えに来て、殉教(信仰のゆえに命を落とすこと)した地であるということだ。

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