《旅する教会》南インド編⑥:4万人の教会

社会・国際

旅する教会 ーアジアの教会を訪ねて:南インド編⑥

鈴木光(すずき・ひかり):1980年、横須賀生まれ東京育ち。アメリカの神学校を卒業後、2006年に日本キリスト教団勝田教会に伝道師として赴任。2010年より主任牧師。妻と娘1人。著書に『「バカな平和主義者」と独りよがりな正義の味方』(2016年、いのちのことば社)、『伝道のステップ1、2、3』(2018年、日本基督教団出版局)。趣味は読書(マンガ)とゲーム、映画、ネット。

 これはアジアの教会のリーダーたちが、互いの国の教会やリーダーを訪ね歩いて学んでいく共同体型の研修〝PALD(Pan Asia Leadership Development)〟の様子を記した旅エッセイである。僕と旅の仲間たちの道中を、どうぞお楽しみください。(毎週火・金曜日更新! この旅のはじまりについてはこちら

4万人の教会

 続いて訪れたのは、チェンナイで一番大きな教会だというNew Life A. G. Church。メンバーの人数は何と4万人で、チェンナイに限らず世界でも有数の規模だと思う(最初聴いた時は数を聞き間違えたのかと思った)。アッセンブリーの教会で、モハン牧師が開拓を始め現在も主任として仕えている。
 会堂は大きなビルだが、ここでも手狭で新しい会堂の計画を祈り進めているそうだ。会議室に案内され、しばらく待つとモハン牧師が来て話を聞かせてくれた。

New Life A. G. Churchの会堂

モハン牧師の歩み

 モハン牧師は1950年生まれ(見た目はとても若々しい)、スリランカ出身(距離的にもチェンナイは近い)で、9歳の頃インドに来たそうだ。もともとクリスチャンホームでお母さんも熱心なクリスチャンだったが、まずこのお母さんが、息子であるモハン先生が直接献身者として召されるという神様のメッセージを受け取ったそうである。
 その後、10歳の時に祈りの中で聖霊に満たされる体験を一度するが、10代の間はしばらく信仰的に情熱のない時期を過ごしたという。しかし、20歳の大学生の時、集会で再び聖霊に満たされて「すべてが変わった」と感じた。その後、大衆伝道をしている先生のもとについてしばらく働きをする中で、明確な召しを受けることになる。
 ちなみに、この大衆伝道者の先生のもとで過ごした経験について語る中で、「誰かに仕えたことのない人を主は用いない。Servant Leader(仕えるリーダー)はまず仕えることを学ばなければならない」と言っていたのが印象的だった。
 神学校を経て遣わされた地域は経済的にも厳しいところで、何度も奇跡的に与えられたお金で働きをつないでいったという。やがて、若者への伝道を使命として受け取るようになり、結婚してチェンナイに移ったところで新しい教会をはじめることになった。
 7人ではじまった開拓教会は、毎朝祈祷会をし、家々を訪問し、少しずつ成長していく。その中で癒やしの祈りが応えられることが多くなると共に、人が次々と集まって来るようになり、急速に集まる場所が足りなくなっていったそうだ。そこで1984年に現在の会堂が建ってからも拡張を繰り返して過ごしてきた。これは裕福なメンバーが多かったからではなく、むしろ教会は貧しいメンバーが多いと言う。「裕福な人は数える(count)が、貧しい人たちは惜しまずささげて何倍にも祝福される姿を見てきた」とモハン牧師は言う。現実にその建物の中で話を聞いているのでリアリティがすごい。

 単に人が漠然と増えていったわけではなく、他の著名なリーダーたちから多くを学んで生かしていったことも分かち合ってくれた。チョー・ヨンギ先生(韓国の大教会の牧師)と交わりがあり、祈ることと小グループ(セルグループ)のミニストリーについて教わったというし、1990年代にシンガポールの先生に具体的なやり方を学んで助けてもらい小グループのミニストリーを始めたのだそうだ。
 その頃は、同じアッセンブリーの先生の中では小グループの教会形成に反対する人も多かったそうだが、むしろ小グループが教会のプログラムではなく教会そのものであり、その交わりを通して人々はイエス様の弟子として成長していくということを体験してきたという。
 現在のメンバーは最初に書いた通り約4万人で、200人の有給スタッフ、80人の牧師、そして1400人の信徒リーダーが働きを進めているそうだ。中でも、この「1400人の信徒リーダー」というのが素晴らしいと後で高澤先生(国際宣教団体「アジアン・アクセス」の副総裁)が印象的に分かち合ってくれた。というのは、「いわゆるメガチャーチ(大規模教会)はアメリカにもあるが、多くの場合ほとんどのメンバーは観客的な(つまり受動的に礼拝や集会に集うだけで働きに主体的に加わることが少ないということ)形になってしまっていることが多くて、この教会は同労者として仕える信徒リーダーたちが育てられているところが違うと感じた」とのこと。

大切な5項目

 最後に私たちのためにアドバイスをモハン先生に求めると、先生がご自分の歩みの中で大切にしてきたことをいくつかあげてくれた。
 第1に、祈ること。祈ることなしに実はないということ。祈りのムーブメントが起これば、人々が勝手に集まってくるようになると。だから、「祈りの家」を建て上げなさいといわれた。
 第2に、キリストの弟子を育てること。信徒のメンバーのために手を置いて祈っていくことが大切だという。「福音を語りなさい! 教えなさい! 洗礼を授けなさい! キリストの弟子としなさい! 遣わしなさい!」と力強く言われたが、イエス様の教えそのままであることに心を打たれた。
 第3に、聖霊の力なしに何も動かないから求めて祈れと言うこと。
 第4に、「神の国」という意識を常にもつこと。自分の教会のことだけ考えるのではなく、他の教会の祝福を祈りなさいと言う。「Don’t build your own kingdom」という言葉は耳に残った。昨日聞いた話とも重なるが、「繁栄の神学はサタンの福音になりえる。聖書は迫害をこそ語っている」とも言っていた。
 最後に加えて、家族を最も大事にしなさい。

 後で、会堂のオフィスや24時間開いている礼拝(祈り)スペース(本当にずっと礼拝している)、さらには無料のカウンセリング所など見学してまわった。いくつも礼拝堂があるけど、バスケのコートかと思うような大きさのものまである。宣教も場当たり的ではなく、コンタクトを取った地域や人々の記録をファイルしてあり、いわゆる聖霊の洗礼を受けた人数の記録もあり、関わりのある人たちの霊的な状況をよく把握して牧会もされている様子がうかがえた。

礼拝堂の「一つ」、ほかにも大きな集会スペースが複数ある

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