《旅する教会》バングラデシュ編⑩:帰り道と初めてのアレ

社会・国際

旅する教会 ーアジアの教会を訪ねて:バングラデシュ編⑩

鈴木光(すずき・ひかり):1980年、横須賀生まれ東京育ち。アメリカの神学校を卒業後、2006年に日本キリスト教団勝田教会に伝道師として赴任。2010年より主任牧師。妻と娘1人。著書に『「バカな平和主義者」と独りよがりな正義の味方』(2016年、いのちのことば社)、『伝道のステップ1、2、3』(2018年、日本基督教団出版局)。趣味は読書(マンガ)とゲーム、映画、ネット。

 これはアジアの教会のリーダーたちが、互いの国の教会やリーダーを訪ね歩いて学んでいく共同体型の研修〝PALD(Pan Asia Leadership Development)〟の様子を記した旅エッセイである。僕と旅の仲間たちの道中を、どうぞお楽しみください。(毎週火・金曜日更新! この旅のはじまりについてはこちら

帰り道と初めてのアレ

アジアン・トイレット

 最終日、充実感と共にバングラデシュを後にして日本に帰るのだが、空港で僕はついにアレに手を出したのである。

 僕は普段とてもお腹の調子が安定的な人で、ほぼ毎日決まった時間にトイレに行くのだが、海外に行って困るのはトイレ時差が発生することなのだ。いわゆるジェットラグ(時差)ならぬ、トイレラグである。

 本来は日本の朝の都合の良い時間帯に僕のお腹はきちんと機能する。しかし、その勤勉さが裏目に出て、時差のある海外では実に不都合な時間帯にトイレを欲することがあるのだ。
 それで、ホテルとか空港とかはちゃんと(ある程度)衛生的なトイレがあるし、用を足すのに問題はないのだが、困るのはその後なのだ。

 僕は日本の最も誇るべき文化の一つは、洗浄機付き便座(いわゆるウォシュ〇ットなど)だと思っている。我が家にももちろん完備しているし、自分の生活圏で付いていない所があると、隙を見ては設置を促すようにしている。
 しかし、海外では最近こそ普及しつつあるが、それでも基本的には付いてないのだ。ウォシュ〇ットが。それで、今回のPALDに参加するにあたって携帯式ウォシュレットを買った(これは商品名を言っても良い、そのメーカーのやつである)。そして、ホテルなどではそれを使って事なきを得ていたのだが、ついに空港でやってしまったのだ。

 もう使わないだろうとタカをくくって、預け荷物に入れてしまったのである。

 では、私はシャージャラル国際空港でどうしたのか。
 ついに使ったのである。ある意味では本場のウォシュ〇ット、おしりを洗うホースシャワーを使ったのである。

 この後訪れるアジア各国ともそうだったのだが、多くの(きれいな)場所ではトイレに日本では見慣れない設備がある。まず、手桶と水バケツ。水を手桶ですくい、洗うべき場所をその水を使って手で洗うのである。ペーパーもある場所にはあるが、基本的には事後に手を拭くためのものである(外国人も泊まる立派なホテルには普通にトイレットペーパーがあって日本と同じアクションでトイレができることも多い)。

 そして、たいていのいい場所にはホースシャワーがあるのである。これは文字通り、ホースが手の届くところにかかっていて、その先にグリップがついている。
 このグリップを握りこむと、実に豪快な水流が噴き出すのである。その勢いたるや日本のウォシュ〇ットの繊細さを嘲笑うかのような荒々しさである。これで洗えば確かにきれいになるだろう。しかし、僕は一度試みに便器に向かって水を出してみて、とても自分の手に負えるような水勢ではないと思ったのだった。

 それでも、この時、この場所で、僕には他に手はなかった。
 ということで、おしりを洗ってみたのだけど、これがまた実に爽快だった。
 慣れてくれば、グリップの握る力の強弱である程度は自由自在に水勢を操ることも可能で、魔法使いにでもなった気持ちがした。いや、牧師のくせに魔法使いになったらいけないが。
 これはこれでまたやってみたい。そんな新しい発見を得て、一路日本に帰ったのだった。

バングラデシュの旅 まとめ

 なぜこの研修に自分は参加するのかと、悩みながら始まったアジアの教会を巡る旅だったが、バングラデシュを旅しながら、やはり神様の導きで参加したのだなと確信を与えられることになった。
 バングラデシュは同じアジアと言っても、日本から大いに距離があり、文化も大きく違う。しかし、こと教会の旅という時に、そこには信仰のマイノリティという重要な共通項があった。ムスリムがマジョリティという点は日本とはまったく違うのだが、伝道する時に直面する課題は驚くほど共感するものだった。

 風景も文化もまったく違うからこそかえって、同じように祈り、同じように懸命に小さな一歩を続けている文字通りの「神の家族」の姿を見て、これまでに経験しなかった種類の励ましを受けた。そして、他国だからこそ、僕の目からはバングラデシュでの伝道の働きに希望が見えたし、同じように日本にも神様の希望の計画があるのだと信じることができた。

 ハレルヤ!

 「旅する教会」バングラデシュ編は本稿で最終回です。次回9月25日より南インド編がスタート!
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