《旅する教会》バングラデシュ編②:独立の歴史

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旅する教会 ーアジアの教会を訪ねて:バングラデシュ編②

鈴木光(すずき・ひかり):1980年、横須賀生まれ東京育ち。アメリカの神学校を卒業後、2006年に日本キリスト教団勝田教会に伝道師として赴任。2010年より主任牧師。妻と娘1人。著書に『「バカな平和主義者」と独りよがりな正義の味方』(2016年、いのちのことば社)、『伝道のステップ1、2、3』(2018年、日本基督教団出版局)。趣味は読書(マンガ)とゲーム、映画、ネット。

 これはアジアの教会のリーダーたちが、互いの国の教会やリーダーを訪ね歩いて学んでいく共同体型の研修〝PALD(Pan Asia Leadership Development)〟の様子を記した旅エッセイである。僕と旅の仲間たちの道中を、どうぞお楽しみください。(毎週火・金曜日更新! この旅のはじまりについてはこちら

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バングラデシュの独立の歴史

イギリス、そしてパキスタンからの独立

 遅い食事をすませてから、ほかのメンバーたちと合流して、宿舎を出発した。ダッカから車で40分ほどのところにある、「独立記念塔」のある公園に行くという。
 独立記念塔は、英語ではNational Martyrs’ Memorial(国の殉死者記念)という。つまり、独立戦争(解放戦争)で命を落とした人たちの記念碑的な塔で、とても特徴的なデザインだ。天に向かってとがった7つの塔が順に重なるように建てられている。
 ここで記念している独立戦争とは、1971年のパキスタンからの独立戦争のことだ。それから約50年ということだから、バングラデシュが本当に若い国であることがわかると思う。
 後ほど詳しく触れるつもりだが、一人の人間で言えばエネルギーに満ちた若者のような勢いを、ダッカの街中の風景や教会のリーダーたちに会う中で感じたが、まさにこの国の歴史自体も若さと力に満ちているのだ。

 イギリス領であったインドが1947年に独立し、ヒンドゥー教徒の多い地域は現在のインドに、そしてイスラム教徒が支配的な2つの地域がパキスタンとして同時に独立した。その2つの地域は東パキスタン(現在のバングラデシュ)と西パキスタン(現パキスタン)で、それぞれ距離が離れていて、おもに使われている言語も違っていた。
 しかし、西パキスタンの方が支配的な地位にあり、特に政府がバングラデシュの人々が使っているベンガル語ではなく、パキスタンのウルドゥ語を公用語としようとしたことをきっかけに、独立運動が始まった。その後、約20年にわたって紆余曲折を経ながら独立運動が続き、1971年の独立戦争とその後のパキスタン軍による侵攻と虐殺で、多大な犠牲者が出ることになった。最終的に、同年のインドとパキスタンの戦争でパキスタンが敗北したことをもって、バングラデシュは完全に独立を果たしたのである。

独立戦争で亡くなった人々を顕彰する独立記念塔

意外と知られていないバングラデシュと日本の関係

 日本はバングラデシュ独立後に、いち早く独立を認めて援助を開始した国の一つであり、主要な開発援助国でもあったので、国全体にかなり親日的な雰囲気がある。
 独立記念塔のある公園には、各国の要人が植樹をしたところがあるのだけど、日本のかつての総理大臣の名前も目にした。
 街中では日本車をたくさん目にする(というか大多数が日本車)だけでなく、「From People of Japan(日本の人々より)」と書かれたゴミ収集車も見かけた。つまり、日本から寄付された車両だということだろう。
 そういえば日本を発つ前に、教会で「私も昔、バングラデシュに行ったことがあるのよ」と声をかけてくれた年配のご婦人もいた。
 僕自身はほとんど意識したことがなかったが、バングラデシュは、励まし支えるべき新興国として日本の教会の中でも祈りに覚えられてきたのだろう。
 一方で、今でも経済的にはまだまだ途上国であることは変わらないと思うのだけど、今回ダッカを見て回って、街中のエネルギッシュさは日本をはるかにしのいでいると感じた。この活気というか、何かが満ち満ちているような力強さは、むしろ分けてもらいたいとすら感じる。これからは「こちらがあちらを励ます」のではなく、互いに励まし合う関係になるのだろう。少なくとも同じイエス様を信じるキリストの体としては。

 そうそう、最後にちょっと「蚊」の話。
 宿舎は既に書いた通り、よく整備されていて部屋に扇風機もついていたので寝るのに不便を感じることはなかった。でも、一つだけ悩まされたのが「蚊」の存在。
 いや、日本でも蚊に悩まされるのは同じで、寝ている間に耳元を「ブーン」と通られると非常に厄介だ。しかし、本当の問題点はその毒の強さなのだ。こちらの蚊に刺されると、とにかくかゆい。日本の虫刺されに塗る薬の効果を飛び越えて持続するかゆさ。なんなら虫よけを塗って寝ているのだが、それでも朝には何か所かやられているのだった。

 蚊もエネルギーに満ちている国、それもまたバングラデシュの一面だった。

宿舎のベッドの角に棒が立ってるのは多分蚊帳をつけるため

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