《心の平安》相手との和解を通して心の平安を取り戻す

信仰生活

相手との和解を通して心の平安を取り戻す

精神科医 堀江通旦

世界は急速に変化しています。経済的なグローバリゼーションはいつの間にか人々の思想をも支配しているようです。周知のように、拡張していく自由貿易の前提は、国と国との間を隔てていた関税を廃止することでした。関税は防衛でもあり束縛でもあります。縛るものから解放されて自由になろうという思想は今に始まったことではありませんが、20世紀の半ばから欧米ではポストモダニズムと呼ばれる、既成の伝統を疑う時代思想が台頭し、それ以来真理の基盤が流動化し、価値観が著しく変わってきて、伝統的な倫理は意識から締め出され、最も強い結びつきであるはずの家族の絆も力を失ってきています。このような世界的な風潮にさらされ、日本でも崩壊していく家庭は明らかに増えています。

平成24年度の司法統計によりますと、離婚の原因としてあげられた申し立ての第1位は男女ともに「性格が合わない」ということだったそうです。しかし、カウンセラーはこのような供述は額面どおりに受け取ることができないことをよく知っています。なぜなら、この結論に至るまでには必ずさまざまな紆余曲折があったはずだからです。

もともと赤の他人同士がある出会いを通して知り合い、愛を感じて生涯を分かち合う決心に至って結婚したはずの夫婦でも、実は知らなかった半面が相手にあったことに後から気がついたという話をよく聞かされます。カウンセリングの詳しい話はこの欄ではできませんが、カウンセラーの役目はまず二人に原点に戻ってもらい、自分たちの夫婦関係の歴史から始めてそれぞれの自分史を振り返り、自分が育った家庭の中での役割や、特に問題のあった親兄弟に対する自己防衛の態度が、無意識のうちに結婚相手に感情転移されてはいないかということに気づいてもらうことです。

相互の理解を深めることが目標ですが、中には自分と向き合うこのプロセスをたどっているうちに自らの盲点に目が開かれ、いちばんもて余すのは実は相手ではなく自分ではなかったかという洞察にたどり着く人がいました。こういう人は相手との和解を通して心の平安を取り戻すことができるのです。神様との和解も、この線から遠くはないかもしれません。(月刊「いのちのことば」2月号巻頭言掲載)