《バイブル・エッセイ》「心は晴れる」そらのそら ー「伝道者の書」とわたし その3

信仰生活

(C) 2019 菅野基似

《バイブル・エッセイ》「心は晴れる」そらのそら ー「伝道者の書」とわたし その3


菅野基似(かんの・もとい)と申します。22歳です。ただいま、フリーター生活を始めました。というのも、ついこの間まで神学生として学んでいましたが、持病である「双極性感情障害」にやられ、学び舎から退く決断をしたばかりです。ここではそんな私のささやかな闘病記とともに、私の好きな「伝道者の書」のことばをご紹介し、ともに味わいたく思います。
それに加えて、まだ理解が進みきっていない「双極性感情障害」という病をご紹介し、少しでも誰かのお役に立てればと願っています。

第1章「そらのそら」その3

「伝道者の書」は「空の空」と語り出しました。


ここでちょっとした笑い話を。ある少年が「伝道者の書」を開いて「空の空」を「そらのそら」と読み間違えたそうです。なんとも可愛い読み間違えです。
でも、どうでしょう。「そらのそら」–––なんだかこの響きが心の中に朗らかさを与えてくれます。どうしてでしょうか。それはきっと、人が沈んでいるときに、青い空(そら)のもとで太陽の光を浴びると気持ちが上向きになるように、「伝道者の書」も私たちに上向きの「空(そら)」を見せてくれて、心にあたたかい風を当ててくれるからではないでしょうか。
でも、どのようなときにそのように感じることができるのでしょうか。「伝道者の書」は空(むな)しさばかりが語られているのにもかかわらず、どこに青空があるというのでしょうか。

「空」を突き抜けた先


それは、私たちが「空(そら)」を突き抜けた先、天におられる神様を信じるときです。「空(くう)の空(くう)」(1章2節)、そして「見よ、すべては空(むな)しく、風を追うようなもの」(1章14節)–––これらのことばは私たちの真実なあり様を告げてくれているのではないでしょうか。人は自分を取り繕い、何かを着飾って生きようとします。しかし、伝道者は逃がしません。空(むな)しさから逃げずに、真剣に向かい合うようにと言いたげです。その時、人は自分自身と出会うのです。そう、この書は私たちの真実な自分自身と出会わせてくれるのです。
きっと私たちが神様を信じることができるのは、まず自分自身と出会うことから始まるのでしょう。私は耳の病気や不登校の経験から、なかなか自分を認めてあげることができませんでした。
でも、私はそういう弱さと、そして自分のうちにある空(むな)しさがかえって自分自身を豊かにしていることに気づいていくようになりました。

曲げられたものを、まっすぐにはできない。
欠けているものを、数えることはできない。
(伝道者の書1章15節)

なんとも悲壮感漂う伝道者の言明ですが、今の私にとっては慰めのことばです。伝道者はここまでずっと「日の下」の中で話を進めてきました。日の下には空(むな)しさだけが漂います。しかし、「そらのそら」にしてみたらどうでしょう。そう、神様の存在を信じる時です。「天にましますわれらの父よ」と祈ってみれば、日の下から天に心が上向きます。

曲げられたものを、まっすぐにはできない


「曲げられたものを、まっすぐにはできない。欠けているものを、数えることはできない」(1章15節)と伝道者は言いました。私は信じます。曲げたのも、欠けさせたのも、天の父であり、父の御旨でなければ髪の毛一本すら落ちることがないほどに私は守られていると信じます。だからこそ、曲げられたもの、欠けさせられたものが存在するのは紛れもなく神のみこころであって、私には想像もつかないような神様のご計画の中に私は導かれていることを信じます。そしてすべては美しくなり、すべてのことが働いて益となる、その確信をもって生きていきたいと私は強く願うのです。

さらに言えば、曲げられたことがあるから、欠けたものがあるからこそ通る道というものが私たちにあるのです。確かにそれは辛い歩みなのかもしれません。ただ今言えることは、そんな凸凹で遠回りをする人生だからこそ、何やら不思議と得るものや知ることが多様であり、豊かで、案外悪いとも言えない人生を歩んでいると言えてしまうということです。

空の空。すべては空。


伝道者は言いました。「空(くう)の空(くう)。すべては空(くう)。」–––このことばは私たちを自分自身と出会わせ、そして神様のもとへ導き、「そらのそら」と天を仰ぐ心を育みます。「空(くう)の空(くう)」とはっきりと明瞭に私たちのあり様を語ってくれることばの鋭さ。だから、この書は神の生きたことばなのです。今日も神は人々に語りかけます。「空の空!」と。
「君の本当の姿を知っている」–––そう神様は言いたげです。だからこそ、神様は人々をご自分のもとに今日も招いておられます。

 

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